設計事務所で家を建てた話(第4回)」

住宅知識

これは、私が建築家と家を建てた時の話です。約10年前のことですので、今は流れが変わっている部分があるかもしれません。家づくりに悩んでいる方の選択肢の一つとして参考になればと思います。

第1回はどのような工法で家を建てるかを検討し、在来軸組工法と決めたことを書きました。

第2回は建築家と家を建てようと思い、設計事務所を探したことを書きました。

第3回は設計事務所の仕事の進め方について書きました。

設計事務所との家づくりの進め方は、以下の流れで進めます。前回、設計事務所との打ち合わせを繰り返し、設計案を固めていく作業までを書きましたので、図面の完成から始めていきたいと思います。

  1. 施主要望のヒアリング
  2. 建設予定地調査
  3. 打ち合わせ
  4. 設計案提示→3→4(数回繰り返し)
  5. 設計図面完成
  6. 工務店選定→決定
  7. 工事請負契約締結
  8. 建築工事開始後に工事監理

5.設計図面完成

設計事務所と施主で何回も打ち合わせを重ねて設計案を煮詰めていきます。デザイン、使い勝手、経年劣化などを考慮しながら進めますが、施主が一番気にすることは「経済性」だと思います。

設計を進めるにあたっては、設計事務所が過去の経験や実績から算出した概算見積もり費用をもとに工事費をコントロールしていきます。

私の場合は、初回打ち合わせ時に明確な予算を示しました。しかし、数回の打ち合わせを重ねた後、設計案が固まってきた時の概算費用は、予算から2千万円を超過するものでした。まあ、こんなことはよくあることだと思います。実際、ほとんどの施主が最初に示した予算に収まることはないと聞きます。

家を建てるときの金額は大きすぎるので、金銭感覚が麻痺してきて、少しくらいの予算オーバーはなんとかなるだろうと思ってしまいます。家を買った勢いで、新車まで購入してしまうなんて話もよく聞きますからね。

一生の買い物であるので、少しの金額を気にすることで後悔したくないという気持ちが働くのだと思います。

私の場合は、結果として予算超過はしませんでしたが、金額の擦り合わせに時間がかかりました。予算をコントロールする手段として、以下のことを一例として実施していきました。

  • 床面積を削る
  • 設備のグレードを見直す
  • 外壁の仕様を見直す
  • 軒の形状を変更する
  • 外構を施工範囲から除く
  • 費用をかける箇所を割り切る

床面積を削る

予算を削減する場合、最も威力を発揮する方法です。床面積は大きいばかりがいいわけではありません。いらない場所、広すぎる場所はどこかにあるかもしれません。

床面積の目安としては、一人当たり8坪というものがあります。まずは、この数字を参考に床面積を見直すことで、削る部分が見つかるかもしれません。

設備のグレードを見直す

システムキッチン、風呂ユニットなどは金額も大きいので、グレードの違いが金額差を生みます。外国製のシステムキッチンに憧れてします気持ちもわからないではありませんが、日本製でもいいものは多数存在します。また、世の中では有名でない会社の中に、知るひとぞ知る的な、品質が良いにもかかわらずお値打ちなものが存在ます。そんなものを見つけてみるのはとても愉しいことですよ。

外壁の仕様を見直す

外壁の仕上げをどうするかは、建物の印象を最も左右します。設計事務所と相談すれば、耐久性や経済性を考慮しつつ、かっこいいものを提案してくれるはずです。

軒の形状を見直す

軒の出幅や形状は外壁を保護する意味合いであったり、外側の印象を決定する重要なものです。ただし、あまりこだわり過ぎると経済的に圧迫してしますので、バランスを取る必要があります。また、外壁にも通じるものがありますが、家全体の形状を単純にすることが費用を削る手段の一つとなるため、シンプルなデザインを目指すことも役に立ちます。

これは、屋根形状についても同様で、シンプルな外見は経済的に優れたものとなります。

外構を施工範囲から除く

家を建てると同時に外構も施工する事で、一体感のあるデザインとすることができます。しかしながら、外構だけは、他のものと違って、後から施工することができます。住みながら、ゆっくりと外構を作り上げていくのも楽しいことです。

私は、思い切って全てを除いたことで、DIY を始めるきっかけとなりました。周囲のフェンス、自転車置き場、ウッドデッキ、芝生張り、植栽などを少しずつ進めています。

家は年月を経ることで変化を楽しむものだと思っています。家の経年変化に合わせて、外構が出来上がっていく様は、家の成長を見ているようで、DIYのやる気も出てくると思います。

費用をかける箇所を割り切る

自分が好きなところ、こだわりたいところには予算をかけますが、そうでない部分には、節約するようにします。満遍なくお金をかけるのではなく、かけたいところにかけるようにします。

私の場合は、お風呂の時間を大切にしたかったのでユニットバスを大きめにしたこと、一階の壁をすべて珪藻土にしたことをこだわっています。

また、リビングで映画を観たかったのでリビングシアターを構築しましたが、テレビの壁掛け、スクリーンやプロジェクターの天井への設置、サラウンド用スピーカーの埋め込みなどもこだわりましたが、これらをDIYしましたので、機器費用以外はあまりかかっていません。

6.工務店選定

設計図面が完成したら、建築工事をしてくれる工務店を選びます。設計事務所が今までの施工実績がある数社に声をかけて、見積もり書を提出してもらいます。

ちなみに、工務店に依頼する見積もりは、設計事務所が概算見積もりとして計算した金額とは、かけ離れることが多いと思います。設計事務所が坪単価的な簡易な手法で計算していることが多いからです。

しかし、慌てるようなことではありません。工務店側は、不覚的要素がある部分については保険をかける意味合いで、少し高めとすることがあります。

材料や設備などの仕様を確認したり、施工詳細を打ち合わせ、不確定要素をなくすことで金額調整をすることができます。この見積もり調整作業は設計事務所の重要な仕事の一つです。

設計事務所から紹介された工務店2社からの見積もりを提出してもらい、設計事務所において工務店の人と話をしました。積算の方法、工事に対する会社の考え、アフターフォローなどについて小一時間ほど話します。

当時は仕事上で様々な施工会社と関わることが多く、ある程度話をすれば会社の雰囲気が掴めるようになっていると思っていました。今考えると若気の至りだったかもしれません。

しかし、当時の私は自分の直感を信じていたので、どちらの会社も仕事を任せたいと思うことはありませんでした。設計事務所が推薦する会社は「なんか違うな」と思ったので、自分が元々気になっていた工務店に声をかけてみました。

気になっていたのは、住宅展示場で見かけた地元の工務店です。住宅を作る会社ですが、神社、仏閣などの伝統構法も扱う会社だったので、その渋い物件が自分の好みにピッタリでした。

その工務店は自社で設計するため、設計事務所と協働したことはないとのことでしたが、見積もり提出することは可能との回答だったのでお願いしました。

見積もりの結果としては、設計事務所が選択した工務店よりも200〜300万円安いもので驚きました。自分で選んできた会社だったので、多少、見積もりが高くともお願いしようと思っていましたが、意外な結果でした。すぐに、この工務店と契約しました。

工事が終わった際に、設計事務所の監理担当者からは「今まで関わった大工の中で最も腕が良かった」と言われました。さらに、施主支給に関してもいろいろ認めてもらえて良かったです。この会社を見つけてこれたのが、家づくりでの最もいい仕事をした部分だと思っています。価格は安いし、腕も良かったなんて最高ですよね。

余談ですが、我が家を施工した後は、この設計事務所と工務店での付き合いができたようで、何件かの物件を施工していました。

施主支給は工事費用を安くできる方法としてよく紹介されていますが、注意が必要です。正直な話、ほとんどの会社では施主支給は認めたくないはずです。施主支給があると責任問題があいまいになってしまうからです。

例えば、施主支給したものの仕様が間違っていた場合、手配し直すことにより、工期に影響が出ます。施工後に故障が発生した場合、施主支給した機器自体の問題か、取り付け時の施工方法に問題があったのかの切り分けをすることも難しくなります。

私の場合は、仕様確認は自分が責任を持つ事現場搬入時期は必ず守る事、引き渡し以降の施主支給部分の不具合発生についてはノークレームとする事、を工務店側と約束し、書面化することで施主支給の了解を得ました。

機器の専門知識を持ち、工程調整ができてはじめて可能であったと思います。基本、設計事務所も施主支給部分についてはノータッチとすることが多いと思います。

相手の工務店や設計事務所によっては、もう少しハードルは低いかもしれませんが、歓迎されることではない事を理解し、施主支給を申し出る場合は、お願いする感じで頼むと上手くいくかもしれません。

7.工事請負契約を締結する

工務店を決めた際には、工事請負契約を締結します。工務店と施主は工事請負契約、設計事務所と施主は設計監理契約を結びます。工事と監理が独立しているので、施工不良を未然に防ぐことができるようです。

契約書には、図面、仕様書、見積もり書を添付して契約を締結します。契約にあたっては、見積もり書の中身を確認することをお勧めします。契約前に工務店お積算担当者と打ち合わせをしましたが、数カ所の違算があったので、なかなかの金額が安くなりました。

慣れていないと難しいかもしれませんが、普通の感覚で金額を見ていくと「あれっ?」という部分があることがあるので、聞いてみるといいかもしれません。後は、図面と数字が合わないことがありますので、その部分も聞いてみましょう。ちなみに、我が家の場合は、20万円の表札があったので、笑いながら削除しましたよ。

実際、多くの見積もり項目がありますので、どこかに間違いは存在します。工事を進めていく間に間違いが判明することもありますが、工事監理者が居れば、上手に請負者と調整してくれると思います。

8.建築工事開始後に工事監理

工事監理は設計図書の通りに工事が進められているか?、施工不良の原因となることがないか?だけではなく、現場を進める中での細かな部分を施工者に指示していきます。

工務店とは独立した立場なので、しっかりした工事監理が期待できます。設計変更に伴う金額変更についても、しっかり話し合って施主の立場で話を進めてもらえるので安心できます。

設計事務所の仕事の流れは以上ですが、設計事務所に依頼することの良さを少しでも伝えることができればいいなと思います。

今回はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は、設計にあたって「良かった所、悪かった所」について、10年以上経過した今だからわかった所を書いていきたいと思います。

普段はDIYに関する記事を書いています。良かったら見てください。

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